カテゴリ「創作語り」に属する投稿[49件](6ページ目)
せっかくなので、先ほどの記事にちらと書いたフリアンとルドヴィックの信頼関係の確立エピソードの草稿を置いておきますね。
冒頭部分のおよそ2,000文字、校正は甘々ですが、よければご覧ください。
今後、この類の記事は以下のタグでより分けられるようにしておきます。
#得ざるものども文章進捗
フリアンが連盟図書館フェガティア分館二階の小会議室にルドヴィックを連れて入室したのは、午前9時30分のこと。
6脚ある椅子のうちひとつの座面に手早くサイドバッグを下ろすと、貴重品が入ったポーチだけを肩にかける。そうして身軽になってから一階へと引き返し、職員にあらかじめ準備してもらっておいたブックカートを借りると、見上げるほど背の高い書架の間を足早に進んでいく。フリアンは前を向いたまま、手に持ったメモを後方のルドヴィックに見せつつ、抑えめのトーンで説明した。
「必要な資料はこのとおりです。あらかじめ収蔵場所を確認してありますので迷わず行けますよ。そうそう、おれの手が届きにくい場所に配置されているものは代わりに取ってもらうことになりますので、恐れ入りますがそのときはよろしくお願いします」
もちろん返事はない。一般図書エリアを通過するとき、「作業中の暇つぶしに一冊持っていくか」と提案したが、やはり同じだった。しかし、フリアンがそれに対して小言を並べることはもうしない。ルドヴィックのあからさまに不愛想な態度の裏にある事情を鑑みれば、心に一切の波風が立つことなどないくらい、もはや日常的な所作となっているのだから。
この日、フリアンが図書館にやってきたのには2つの理由があった。
1つめは、新製品に使用する小麦の品種と粉末の配合量を速やかに決定するための事前調査である。製品開発というものは試作を重ねていくのが主要なやり方だが、社内外で繰り返されてきた妨害工作による印象操作と、エイツ農村の環境改善を急ぐために散々働いてきた無体へのツケが回ったのだろう、本社に具体的成果を提出するまでの猶予設定が突然前倒しされてしまっていたのだ。しかも、期限内に成果を出せなければ、すでに承認されたはずの農地計画までもが白紙に戻ってしまうというのだから事態は深刻である。なので、試作回数を最小限におさえ、かつ成果は最大限にするためにも、できる限り最良の候補を絞り込む必要があった。
2つめは、ここ最近不穏な出来事が立て続けに起こっているので、比較的安全な場所にこもって穏やかに過ごしたいと思ったからだ。本来は生活上の指南役という名目で同行しているルドヴィックが、○○○○による一連の拉致計画事件をはじめとした様々な局面において、肉体の盾や反撃装置として矢面に立たされる場面が増加したことも、心労として重くのしかかってきていた。自分が騒動の中心にいることだけは確かなのに、全容を把握することはなぜか許されず、改善不可能な状況にとどまり続けることを強いられる。これにはさしものフリアンも参ってしまった。同じく辟易としているであろうルドヴィックの顔を見ると、心に申し訳なさが先立つようになってしまったほどに。
だからフリアンはこの日、自分だけではなくルドヴィックの身の安全までもが約束されるよう、他者との接触が最低限に抑えられ、かつ警備が万全な環境で一日中過ごせる場所に引きこもって過ごそうと考えた。喫緊の課題に全力で向き合えて、しかも一日中心穏やかに過ごせる環境とくれば、図書館はまさしく理想的だ。狭い自室でびっしりと書き込まれたスケジュール帳をにらみつけていたフリアンは、お手製のポテトボウルを頬張りながらうつうつとしていたが、これを思いついた途端に心のくもりが一気に晴れたような気分になった。
図書館で缶詰状態になって勉強するだけのそれを「なにすば作戦」――何もない素晴らしい一日作戦――と名付けたフリアンは、すぐさまリスケジューリングなどの準備を済ませ、立案から3日後にはもう実行に移したのだった。
目的の農林水産エリアまでやってくると、彼らの足からは一層迷いがなくなり、書架の間を次から次へと動き続けた。案の定、はしごが設置されていない中途半端な高さの書架の最上部にある資料は、フリアンの背丈では微妙に届かない。普段ならば踏み台を借りるのだが、今日に限っては無駄な動きを最小限に抑えたかったので、ルドヴィックに声をかけて代わりに取ってもらうようにした。
なぜそうまでして効率的に動きたがるのかといえば、それは他者との接触をなるべく避けるためであり、それはフリアン自身のためではなくルドヴィックのためであった。彼の安全を確保することは、単に警備が保障されている領域に入るだけでは済まされず、悪意を隠している人物との接触機会の回避までもが含まれなければならないと、フリアンは経験上そう確信していたのだ。
ものの15分ほどで会議室に舞い戻り、フリアンはルドヴィックにくつろぐよう椅子をすすめ、着席したのを見届けてからその斜め向かいの席に自らも腰を下ろし、慣れた手つきで筆記用具と資料を広げて仕事にとりかかった。畳む
冒頭部分のおよそ2,000文字、校正は甘々ですが、よければご覧ください。
今後、この類の記事は以下のタグでより分けられるようにしておきます。
#得ざるものども文章進捗
フリアンが連盟図書館フェガティア分館二階の小会議室にルドヴィックを連れて入室したのは、午前9時30分のこと。
6脚ある椅子のうちひとつの座面に手早くサイドバッグを下ろすと、貴重品が入ったポーチだけを肩にかける。そうして身軽になってから一階へと引き返し、職員にあらかじめ準備してもらっておいたブックカートを借りると、見上げるほど背の高い書架の間を足早に進んでいく。フリアンは前を向いたまま、手に持ったメモを後方のルドヴィックに見せつつ、抑えめのトーンで説明した。
「必要な資料はこのとおりです。あらかじめ収蔵場所を確認してありますので迷わず行けますよ。そうそう、おれの手が届きにくい場所に配置されているものは代わりに取ってもらうことになりますので、恐れ入りますがそのときはよろしくお願いします」
もちろん返事はない。一般図書エリアを通過するとき、「作業中の暇つぶしに一冊持っていくか」と提案したが、やはり同じだった。しかし、フリアンがそれに対して小言を並べることはもうしない。ルドヴィックのあからさまに不愛想な態度の裏にある事情を鑑みれば、心に一切の波風が立つことなどないくらい、もはや日常的な所作となっているのだから。
この日、フリアンが図書館にやってきたのには2つの理由があった。
1つめは、新製品に使用する小麦の品種と粉末の配合量を速やかに決定するための事前調査である。製品開発というものは試作を重ねていくのが主要なやり方だが、社内外で繰り返されてきた妨害工作による印象操作と、エイツ農村の環境改善を急ぐために散々働いてきた無体へのツケが回ったのだろう、本社に具体的成果を提出するまでの猶予設定が突然前倒しされてしまっていたのだ。しかも、期限内に成果を出せなければ、すでに承認されたはずの農地計画までもが白紙に戻ってしまうというのだから事態は深刻である。なので、試作回数を最小限におさえ、かつ成果は最大限にするためにも、できる限り最良の候補を絞り込む必要があった。
2つめは、ここ最近不穏な出来事が立て続けに起こっているので、比較的安全な場所にこもって穏やかに過ごしたいと思ったからだ。本来は生活上の指南役という名目で同行しているルドヴィックが、○○○○による一連の拉致計画事件をはじめとした様々な局面において、肉体の盾や反撃装置として矢面に立たされる場面が増加したことも、心労として重くのしかかってきていた。自分が騒動の中心にいることだけは確かなのに、全容を把握することはなぜか許されず、改善不可能な状況にとどまり続けることを強いられる。これにはさしものフリアンも参ってしまった。同じく辟易としているであろうルドヴィックの顔を見ると、心に申し訳なさが先立つようになってしまったほどに。
だからフリアンはこの日、自分だけではなくルドヴィックの身の安全までもが約束されるよう、他者との接触が最低限に抑えられ、かつ警備が万全な環境で一日中過ごせる場所に引きこもって過ごそうと考えた。喫緊の課題に全力で向き合えて、しかも一日中心穏やかに過ごせる環境とくれば、図書館はまさしく理想的だ。狭い自室でびっしりと書き込まれたスケジュール帳をにらみつけていたフリアンは、お手製のポテトボウルを頬張りながらうつうつとしていたが、これを思いついた途端に心のくもりが一気に晴れたような気分になった。
図書館で缶詰状態になって勉強するだけのそれを「なにすば作戦」――何もない素晴らしい一日作戦――と名付けたフリアンは、すぐさまリスケジューリングなどの準備を済ませ、立案から3日後にはもう実行に移したのだった。
目的の農林水産エリアまでやってくると、彼らの足からは一層迷いがなくなり、書架の間を次から次へと動き続けた。案の定、はしごが設置されていない中途半端な高さの書架の最上部にある資料は、フリアンの背丈では微妙に届かない。普段ならば踏み台を借りるのだが、今日に限っては無駄な動きを最小限に抑えたかったので、ルドヴィックに声をかけて代わりに取ってもらうようにした。
なぜそうまでして効率的に動きたがるのかといえば、それは他者との接触をなるべく避けるためであり、それはフリアン自身のためではなくルドヴィックのためであった。彼の安全を確保することは、単に警備が保障されている領域に入るだけでは済まされず、悪意を隠している人物との接触機会の回避までもが含まれなければならないと、フリアンは経験上そう確信していたのだ。
ものの15分ほどで会議室に舞い戻り、フリアンはルドヴィックにくつろぐよう椅子をすすめ、着席したのを見届けてからその斜め向かいの席に自らも腰を下ろし、慣れた手つきで筆記用具と資料を広げて仕事にとりかかった。畳む

こういう「どうでもいいだろそんなの!」と突っ込まれそうなことを真剣に考えているときが一番楽しいまであるかもしれません。
ルドヴィックがカモノハシを好むのは、たまたま目にした図鑑でその性質の不可思議さを知って衝撃を受けたため。
以下、画像内に書き込まれている文章の書き起こしです。長いので格納。
雪だるま解説
【小型雪だるま】
目や鼻…玄関横に生えているトキワサンザシの実
手など…庭のすみにあるコニファーの弱った枝
葉っぱ猫耳の耳…隣家の敷地から飛び出したレッドロビン(剪定許可取得済み)
【雪だるマン 3:7 零式 ~カブスペシャル~】
トサカ(?)…カブ 目…空きビンのふた
鼻とボタン…コルク 口…食べたばかりの冷凍ライチの種
その他小ネタ
- テントウムシはフリアンの一番好きな虫、カモノハシはルドヴィックの一番好きな動物
- 「うっかりシエスタ」はフリアンが倒してしまった雪だるまに、ルドヴィックがタオルをかけた合作
- フリアンが作った雪だるまがやたらウィンクをしているのは、作ってるうちに楽しくなっちゃったから
- 雪だるマンの造形とネーミングには、二人ともまだ納得していない。来シーズンの研究が待たれる
☆各雪だるま名称
【合作】
雪だるマン 3:7 零式~カブスペシャル~
うっかりシエスタ
【フリアン作】
4:6くん
ネコ親子
ウィンク3段
葉っぱ猫耳
すやすやくん
テントウムシ
ウィンクトナカイ
【ルドヴィック作】
ゆきひつじ
雪男爵
カモノハシ畳む

「得ざるものども」の漫画を更新しました。ゆるゆるギャグです。
描いた本人も「なんだよ今季最高雪だるま会議ってよォ~~~!!!」って思ってます。マジで何……?
けど、「力持ちの弟を雪かき要員にするために呼びに来たお兄ちゃん」と、「それを遠慮がちに止めようとする投げやり執事」という、
出だしからしてなんなんだポイント高めの話なので、会議のネーミングがやたら珍妙だなんてそんなの些事ですね、ええ。
フリアンとルドヴィック以外のキャラクターも少しずつ動かせており、ここ最近は満足度が高いです。登場人物みんな大好きだからさ……!
せっかくならドゥリオルグ3兄弟の末弟ロードリックも出したいということで、1ページ分のおまけを描いたらSNSにアップしたいなぁと思います。


書き出しが前回の終わりと重複しています。
#得ざるものども文章進捗
ものの15分ほどで会議室に舞い戻ると、フリアンはルドヴィックにすぐさま椅子をすすめ、着席したのを見届けてからその斜め向かいの席に自らも腰を下ろし、慣れた手つきで筆記用具と資料を広げて仕事にとりかかった。もちろん、手持無沙汰なルドヴィックをなるべく退屈させないよう、頃合いを見ながら当たり障りのない話題を提供するのも忘れない。「手洗いに行くときは少し面倒だが1つ上のフロアに行くと個室が広いからおすすめ」だとか、「のどが乾いたらフロア突き当りの休憩室にウォーターサーバーがあるのでそれを利用すると良いし、ついでに部屋の窓から通りを眺めると気分転換になる」だとか。そんなことを話していたら、フリアンはあることを第一に確認せねばならなかったのを思い出し、「そういえば」と続けた。
「お昼は少し遅めの時間に、併設のカフェで済ませようと思うのですが、それでもいいですか」
そのカフェにはいくつか半個室スペースがあり、人目を気にせず落ち着いて食事がとれるし、全体的に量が少なめなので食が細くても手早く食べきれる。なので、可能であればそこで昼食を済ませてしまいたかった。しかし、腹にたまる肉系のメニューは無いので、ルドヴィックにとってはあまり好ましくない提案だろう。そう案じて様子をうかがっていると、ルドヴィックは不満げながらも小さくうなずいた。フリアンは胸をなでおろして、手元の資料に目を落とす。
「今月からカルボナーラをリニューアルしたらしいですよ。ルドヴィックさん、先月立ち寄ったお店で食べてたじゃないですか。味を比べてみたら面白いかもしれませんね」
言外に「知らねえよ」と返したげなため息が聞こえたが、フリアンは構わずに続けた。
「最近コメンキュームの方でも小麦の品種改良が盛んにおこなわれていて、それがフェガティアにも入ってくるようになったんですよ。リニューアルしたパスタに使われてるんですって……」
そうこう話ながらある資料に目を通していた時、先に目を通した書籍の記述との矛盾点を発見した。あわてて辞典を引き寄せながら、前後の文脈もあわせて再度検討するが、いまひとつ正誤が判然としない。まだ確認していない本の中からより新しい発行日のものを探り当て、素早くページをめくっては慎重に読み進めていく。フリアンはすっかり自分の世界にのめりこんでしまった。
「おい」
かすかな緊張をはらむ低い呼びかけをどこか遠くのもののように感じながら、紙面にペンを走らせる。先ほどよりも強めの声が飛んできて、ようやく意識が紙面から小会議室へと急激に戻ってきてた。自分のそばにルドヴィックがいることを思い出したのだ。慌てて顔を上げてみると、ルドヴィックがこちらに怪訝そうな眼差しを向けていた。いつもより眉間のしわが深まっている。いら立っているとも、疑っているとも似つかないその表情。困惑している? いったいなぜ。
「どうしましたか?」
「どうも何もない。いつまでそれは続く」
顎で卓上を示されたので、そうですねと呟きながら手元を見渡し、レポートをめくって、予定と実際の進捗を頭の中で比べた。おおむね望ましいペースでことは進んでいるだろう。
「こちら側に寄せてある3冊の本を確認したら、一度休憩します。ざっと見積もってあと一時間ほどでしょうか」
鼻根に刻まれた線を一層深くしたルドヴィックは、口の中で「いちじかん」という言葉を反芻した。それを見て、フリアンは腕時計に目をやると、あと少しで13時に差し掛かるところだった。2時間は集中していたのかもしれない。
~中略~
困惑の仕草と声の震え。この密室で過ごしている時間はルドヴィックにとって、動揺が見かけに現れてしまうほどの心的負担を伴うものなのだと。
何も起こらないこと――誰からも敵意を向けられない穏やかな時間を過ごすことが、異常事態。
フリアンの心の奥に、鋭くて冷たい痛みが広がっていく。ルドヴィックの内心にまったく思い至らなかった後悔の念が。一刻も早く外に連れ出してあげたい。それだけではなく、何か気が紛れるようなことを提供できればなおのこと良い。すぐに思考を巡らせ、未確認の資料を素早く手に取り、背表紙を開いた。
「いえ、まずはこれらの内容を確認します。既知のものであれば、時間をかけて読み解く必要はありませんから、その分時間を短縮できるかも」
言葉を紡ぎながら、ふと思いついた。フリアンはもう一冊本を取り、十数枚の小さな紙切れとともにルドヴィックの前に差し出す。
「ルドヴィックさんがもしよければ、索引からこれと、これと……この単語を探してもらえませんか?」
言われるがままに背表紙を開くルドヴィックの隣にすばやく移動し、共に索引から単語を見つけ出して該当のページを開き、紙片を小口から少しはみ出すような形で挟み込むよう手伝った。
「今と同じことを繰り返して、すべてのページをマークし終わったらここに置いてください。その次はこの本をお願いします。大丈夫、すぐに確認します。それと、この作業が終わったら資料をいったん返却して、少し離れたところまで外出しましょう」
「昼はここで済ますんじゃねぇの?」
「予定変更です。外の空気をたくさん吸いたくなったので」
所在なさげな声で「わかった」とだけつぶやくと、説明を受けている間どこか空を見ていたようなルドヴィックは、また索引へと焦点を戻したようだった。いつになく彼が協力的なのは、目の前の資料に興味があるからではない。早くここから出たいという一心からに違いなかった。真っすぐ胸を貫く勢いで伝わってくる苦悶に、フリアンは自分の呼吸さえ詰まりそうになるのを感じて、一度深呼吸する。少しだけしびれた手の感覚を確かめるように何度か握りつつ着席すると、急いで内容を精査し始めた。
フリアンは、隣にいる大男が何よりもはかなくて不安定な存在のように思えてならなかった。
~ここまで~
この時点のフリアンは、ルドヴィックが置かれてきた異常な抑圧環境について、シラさんからある程度聞いて把握している、という状況。
勢いでバーッと書いてみたは良いものの、数日おいてから読み直してみると、文章の運びの不自然さが気になってひっくり返りそうになりますね…。畳む